後遺障害等級12級の認定を受けたい方、認定を受けて適切な賠償を受けたい方

交通事故による怪我の中で、後遺障害等級12級の認定がおりる怪我は、痛み・痺れ等の神経症状、手・足・肩等の関節機能傷害や変形障害、歯牙欠損など多岐にわたります。
自賠責保険の損害調査を行う損害保険料率算出機構が出した統計上では、平成25年に後遺障害等級認定を受けた人の内の約17%が12級の認定を受けています。
当事務所へのご相談、ご依頼の方の中でも、後遺障害認定申請によって12級の認定を受けた事案が多くあります。

ここでは、後遺障害等級12級に該当する後遺障害とはどのようなものがあるか、賠償額はどの程度が適切なのかについてご説明します。

後遺障害等級12級に該当する後遺障害とは

後遺障害等級12級の認定基準

第1級

症状

該当する部位

1号

1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

2号

1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

3号

7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

4号

1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

5号

鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

6号

1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

7号

1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

8号

長管骨に変形を残すもの

9号

1手の小指を失ったもの

10号

1手の人差指、中指又は薬指の用を廃したもの

11号

1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の指を失ったもの

12号

1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの

13号

局部に頑固な神経症状を残すもの

神経

14号

外貌に醜状を残すもの

醜状

各号の傷害部位と認定基準

<1号 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの>
 眼の「調節機能障害」と「運動障害」に関する基準です。

・調節機能障害
調節機能とは、対象に対してピントを併せる機能のことをいいます。
人の眼には凸レンズのような形をした水晶体という組織があり、この厚さを調節することによってピントを合わせています。
12級1号のいう「著しい調節機能障害を残すもの」とは、調節力が通常の場合の1/2以下になる場合をいいます。
水晶体の弾力性は年齢と共に衰えていくため、調節機能は年齢に比例して低下します。
表との比較を行う際は、症状固定時の年齢を元に判定します。

年齢

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

65

調節力(D)

9.7

9

8

6.3

5.3

4.4

3.1

2.2

1.5

1.4

1.3

・運動障害
注視野により判定します。注視野とは、頭部を固定した状態で眼球のみを動かして直視することのできる範囲をいいます。個人差がありますが、健常な人の場合、単眼で50度、両眼で45度といわれています。
 12級1号のいう「著しい運動障害を残すもの」とは、眼球の注視野の広さが1/2以下に制限される場合をいいます。

<2号 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの>
 まぶたの運動障害に関する基準です。
 12級2号のいう「まぶたに著しい運動障害を残すもの」とは、開瞼時(まぶたを開いた時)に瞳孔を完全に覆うもの、または閉瞼時に角膜を完全に覆うことができないものをいいます。
まぶたの運動障害は医師の視診と触診で判断されます。
 補強資料として、写真を添付して後遺障害の認定を求めます。

<3号 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの>
 歯牙障害に関する基準です。
 12級3号のいう「歯科補綴(しかほてつ)を加えたもの」とは、現実に喪失、又は著しく欠損した歯牙に対する補綴をいいます。著しくとは歯冠部(見えている部分)の3/4以上を欠損していることをいいます。
なお、現実に喪失、又は著しく欠損した歯牙以外でも、歯科技工上必要とされて削った歯牙が上述の基準を満たす場合は、その歯についても後遺障害の判断の対象となります。

<4号 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの>
 耳の欠損障害に関する基準です。
 12級4号のいう「耳殻の大部分を欠損したもの」とは、耳殻の軟骨部の1/2以上欠損したものをいいます。

<5号 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの>
 体幹骨の変形障害に関する基準です。
12級5号のいう「著しい変形を残すもの」とは、裸体になったときに変形や欠損が明らかにわかる程度のものを指します。X線写真でみてはじめて発見できる程度のものは該当しません。

<6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの>
 上肢の関節の機能障害に関する基準です。
「上肢の3大関節」とは、手関節、肘関節、肩関節のことをいいます。
 機能障害の等級は、関節の可動域がどの程度制限されているかによって判断されます。
 制限の有無については、健側(事故の影響による症状がない側)の可動域と比較することによって判断することになります。
 12級6号のいう「機能に障害を残すもの」とは、可動域が3/4以下に制限されていることをいいます。

<7号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの>
 下肢の関節の機能障害に関する基準です。
「下肢の3大関節」とは、足関節、膝関節、股関節のことをいいます。
 機能障害の等級は、関節の可動域がどの程度制限されているかによって判断されます。
 制限の有無については、健側(事故の影響による症状がない側)の可動域と比較することによって判断することになります。
 12級7号のいう「機能に障害を残すもの」とは、可動域が3/4以下に制限されていることをいいます。

<8号 長管骨に変形を残すもの>
 長管骨の変形障害に関する基準です。
 長管骨とは、上肢(上腕骨、橈骨、尺骨)と下肢(大腿骨、脛骨、腓骨)とがあります。
 変形障害は、偽関節の有無と骨の変形や欠損の有無により判断されます。
 偽関節とは、骨折の後、骨がくっつかずに回復が止まってしまったものをいいます。
 つまり骨がくっつかずに止まってしまったか(偽関節)、骨はくっついたけれども変形が残っているか(変形や欠損)という点で差が生じます。

<9号 一手の小指を失ったもの>
 指の欠損障害に関する基準です。
 12級9号のいう「手指を失ったもの」とは、近位指節間関節以上を失ったものとされています。具体的には、以下の場合が該当します。

  • ・手指を中手骨または基節骨で切断したもの
  • ・近位指節間関節の基節骨と中節骨を離断したもの

<10号 1手の人差し指、中指又は薬指の用を廃したもの>
 指の機能障害に関する基準です。
 12級10号のいう「手指の用を廃したもの」とは、手指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指節関節もしくは近位指節間関節に著しい運動障害を残すものとされています。具体的には以下の場合が該当します。
 

  • ・手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
  • ・中手指節関節又は近位指節間関節の可動域が健側(事故の影響による症状がない側)の顔う域確度の1/2以下に制限されるもの。
  • ・手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したもの

<11号 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの>
 足指の欠損障害に関する基準です。
 12級11号のいう「足指を失ったもの」とはその全部を失ったものとされています。具体的には、中足指節関節から失ったものがこれに該当します。

<12号 1足の第1の足指又は外の4の足指の用を廃したもの>
 足指の機能障害に関する基準です。
 12級12号のいう「足指の用を廃したもの」とは、第1の足指は末節骨の半分以上、その他の足指は遠位指節間関節以上を失ったもの、又は中足指節関節もしくは近位指節間関節(第1の足指にあたっては指節間関節)に著しい運動障害を残すものとされています。
 具体的には、以下の場合がこれに該当します。

  • ・第1の足指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
  • ・第1の足指以外の足指を中節骨もしくは基節骨を切断したもの又は遠位指節間関節もしくは近位指節間関節において離断したもの
  • ・中足指節関節又は近位指節間関節(第1の足指にあたっては指節間関節)の可動域が健側の可動域確度の1/2以下に制限されるもの

<13号 局部に頑固な神経症状を残すもの>
 疼痛(痛み)や痺れ等の神経症状に関する基準です。
 交通事故における怪我の中でも代表的なむち打ち・捻挫は、これに該当します。
 「頑固な神経症状を残すもの」とは、自覚症状が他覚的所見(検査結果や画像所見によって外部から認識できること)により、事故による症状として証明可能な場合をいいます。
 なお、他覚的所見による「証明」ができずとも、事故による症状として「説明」が可能な場合は、14級が認定され、それ以外の「証明」も「説明」も難しい場合は非該当となります。

<14号 外貌に醜状を残すもの>
 外貌の醜状障害に関する基準です。
 外貌とは、日常露出する部分を指し、頭部、顔面部、頸部が該当します。
 12級14号のいう、「醜状を残すもの」とは、以下のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。

  • ・頭部については、鶏卵大面以上の瘢痕、又は頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損
  • ・顔面部については、10円銅貨大以上の瘢痕、又は長さ3センチメートル以上の線状痕
  • ・頸部については、鶏卵大面以上の瘢痕

後遺障害等級12級の賠償額

自賠責において後遺障害等級が認定されると、等級に応じた「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」を請求することができます。

後遺障害慰謝料とは

後遺障害を負ったことに対する肉体的、精神的負担に対する慰謝料のことをいいます。
自賠責施行令の等級に応じて請求できる金額が変わってきます。
後遺障害慰謝料には、自賠責保険の基準と裁判所が認める基準があり、保険会社が提示する金額と弁護士が交渉して認められる金額との差が大きいものとなっております。
後遺障害等級12級が認められた場合の後遺障害慰謝料は、自賠責基準では93万円となりますが、裁判所基準上では290万円となります。両者の間では、200万円近い差が生じることになります。

逸失利益

後遺障害が残ったことにより、将来に亘って発生する損害に対する賠償です。
以下の計算式によって算定されます。
後遺障害が残ったことにより、将来に亘って発生する損害に対する賠償です。
以下の計算式によって算定されます。

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

※「労働能力喪失期間」
後遺障害を負ったことによって労働能力を失うことになってしまった年数をいいます。労働能力喪失期間の終期は原則67歳までとなりますが、高齢者の場合には、67歳までの年数と、厚生労働省が公表している簡易生命表上の平均余命までの年数の2分の1のどちらか長い方が労働能力喪失期間となります。
なお、むち打ち・捻挫の方の場合は、労働能力喪失期間は10年(ライプニッツ係数にして「7.7217」)とされることが多いです。

 ※「ライプニッツ係数」
「中間利息控除」とも言います。賠償金として受け取る場合、本来被害者が生涯をかけて稼いだはずの金額を前倒しで一度に受け取ることになります。たとえばこの金額を銀行に預金した場合、本来は生じなかったはずの利息が利益として生じます。より実態に則した正確な賠償額に近づけるために、一度に受け取ったことによって生じた利益を控除する指数がライプニッツ係数です。

後遺障害等級12級 東京みずき法律事務所の解決例

ここでは当事務所の依頼者で、後遺障害等級12級の認定を受けた方の参考事例をご紹介します。

1.男性(40代 会社員)
後遺障害等級:12級13号
・入通院慰謝料132万円
・逸失利益707万円
・後遺障害慰謝料 290万円

2.女性(60代 パート)
後遺障害等級:12級6号
・入通院慰謝料 95万円
・逸失利益 350万円
・後遺障害慰謝料 290万円

いかがでしたでしょうか。
後遺障害12等級の認定を受けたい方、12級の認定があって適切な賠償を受けたい方は、是非一度当事務所までお問い合わせください。