むち打ちについて 治療と後遺障害等級認定に関して
交通事故事件を多く扱っていると、一番と言っていいほど耳にする症状名がむち打ち症です。しかし、一般の方は、実際にむち打ち症になったことがある方でないと、そもそもむち打ち症とはどういう作用によって生じる怪我なのか、どんな症状が出るのかなどは意外と知らないのではないでしょうか。
そこで、今回は交通事故の代表的な怪我であるむち打ち症について、ご説明します。
1 そもそもむち打ち症とはどんなもの?
むち打ち症とは、頚部、すなわち首の部分に急激に外からの力が加わることによって、首が鞭のように前後にしなることによって現れる様々な症状を総称したものです。医学的な傷病名としては、「頚椎捻挫」「頚部挫傷」「外傷性頚椎症」などと呼ばれ、診断書にも書かれますが、すべて同じものと考えていいでしょう。
頭部と胴体をつなぐ首はもともとしなりやすい構造になっているため、胴体が衝撃を受けたときなどに、その勢いで頚部が過度に進展・屈曲してしまい、それによって頚部が損傷する、というプロセスで発症すると考えられています。交通事故では、たとえば追突事故の場合、追突されたときの衝撃で、体は前に押し出されますが、頭は取り残されてしまうため、首が正常に動く範囲を超えて過度に伸びてしまうことで、首の骨や靭帯等の組織が損傷してしまう、というとわかりやすいでしょうか。
2 具体的にどんな症状が出る?
事故直後の症状としては、頚部の痛みや不快感などが現れることが多いですが、事故直後には症状が現れず、2、3日後、あるいはもっと後になってから症状が現れるということもあります。これらの症状は、時間の経過とともに良くなっていき、多くは長期化せずに治療が終了しますが、中には症状があまり良くならないまま持続して、頭痛やめまい、吐き気、頭部・頚部・手足のしびれなどが現れてくることもあります。
3 むち打ち症の治療期間はどれくらい?
むち打ち症に対しては、理学療法や運動療法、薬物療法などの治療が行われますが、これらの治療が適切に行われた場合、医学的には一般的に3か月程度が治療期間として相当とされているようです。しかし、同じ切り傷でも数日で治るものと1か月以上かかるものがあるように、むち打ち症についても、その重篤さによっては、6か月あるいはそれ以上の治療期間が必要になる場合もあります。
しかし、交通事故でむち打ち症となった場合、通常治療費を支払ってくれる、事故の相手方の保険会社は、事故の程度によって、長くても6か月程度で必要な治療は終了するとして、治療費の打ち切りを打診してくることが多いです。症状が残存し、治療をしても目立った改善効果が認められなくなった状態を「症状固定」といいますが、保険会社としては、長く治療を続けても改善していないのであれば、症状固定になったのだろうと判断し、治療費の打ち切りを打診してくるのです。
自己負担にはなってしまいますが、もちろん被害者としては、治療による改善を感じているのであれば、通院を継続することについては問題ありません。治療期間について争いがあると、示談交渉で認めてもらうのはほぼ不可能ですが、訴訟で争うことは可能です。
4 むち打ち症で後遺障害等級認定は受けられる?
後遺障害等級認定とは、損害保険料率算出機構という機関が、被害者に残存している症状について、自賠責法上の後遺障害等級のいずれかに認定することをいいます。後遺障害等級認定を受けた場合、事故の相手方に対して、傷害慰謝料のほかに、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。
むち打ち症では、後遺障害等級12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」、14級9号「局部に神経症状を残すもの」が認定される可能性があります。前者は画像などによって客観的に明らかな異常が認められることが前提となりますが、後者は、客観的に明らかな異常がなくても認められることがあります。ただし、客観的な根拠がない場合、様々な要素から、残存している症状が後遺障害と認められるかを判断するため、簡単に認定されるものではありません。
むち打ち症の場合、自覚症状のみで客観的な異常が認められないことが多いため、そもそも後遺障害等級認定を受けるハードルは高いのですが、自覚症状のみであったとしても、治療状況などから症状が説明可能と判断されれば、14級9号で認定を受けることができます。そのため、事故後にどのように治療を受けていけばいいかなどを知っておくことは非常に重要といえます。
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