首の後遺障害とは?
頚椎は、頭を支えるための骨で、7つの椎骨と呼ばれる骨で構成されています。また、頚椎の中には脊髄及び神経根という神経が通っています。
つまり、頚椎は頭を動かすための骨という役割だけではなく、脳から手や足へ神経を伝達する役割も担っているのです。
この頚椎に衝撃が加わると、様々な怪我や症状を引き起こす原因になります。
代表的な「むち打ち」
頚部の受傷として代表的なのはいわゆる「むち打ち」です。
むち打ちとは正式な病名ではなく、診断名としては頸椎捻挫、頚部挫傷、外傷性頸部症候群、頚椎症など様々です。
これは、頚椎への衝撃により、神経が圧迫、損傷していることが原因と考えられる神経症状ですが、レントゲンやMRI検査などでも医学的所見が発見できないことも多いです。
後遺障害等級認定基準
むち打ちのような神経症状での後遺障害等級は、12級13号と14級9号があります。
・12級13号 「局部に頑固な神経症状を残すもの」
自覚症状が他覚的所見(検査結果や画像所見によって外部から認識できること)により、事故による症状として証明可能な場合。
・14級9号 「局部に神経症状を残すもの」
事故の状況、診療経過からわかる症状に連続性・一貫性があり、事故による症状として説明可能であり、医学的に推定できる場合。
12級13号と14級9号の二つの分かれ道
12級13号と14級9号の違いは、説明可能か証明可能かです。
14級9号は、自覚症状の発生が、事故の態様などから説明できることまでで良いのに対して、12級13号は自覚症状が事故を原因とするものであることが医学的に証明できなければなりません。レントゲンやMRI検査の結果や、ジャクソンテスト・スパーリングテストの結果がこれらの等級を分けることになります。
むち打ちについて詳しくはコチラをご覧ください
頚椎骨折等
上述したように、頚椎は脊椎の一部です。そのため、頚椎を骨折などした結果、治療をしても原状回復しなかった場合には、後遺障害が認められる場合があります。
後遺障害認定等級基準
頸部骨折などによる後遺障害については、6級5号、8級2号、11級7号があります。
・6級5号 「脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの」
・8級2号 「脊柱に運動障害を残すもの」
・11級7号 「脊柱に変形を残すもの」
6級5号、8級2号、11級7号、これらの分かれ道
脊柱の運動障害及び変形は、程度によって3段階に分かれています。
<変形障害について>
レントゲンやCT、MRI画像などで、圧迫骨折が確認できる場合に、脊柱の後わん(脊柱が後方へ大きく突き出していること)や側わん(脊柱が右や左へ湾曲していること)の程度で評価されます。なお、横突起や棘突起の局部的な欠損や変形では認められず、あくまで脊柱自体に変形が残ることが必要です。
<運動障害>
脊椎圧迫骨折等のために、どの程度頚部の可動が妨げられているかによって評価されます。この場合も、単なる運動障害のみではなく、画像診断で脊椎圧迫骨折や脊椎固定術等が認められないと、運動障害として評価されなくなってしまいます。
頚髄損傷
頚椎は脳と体をつなぐ場所のため、当然脊髄(頚髄)も通っています。この神経を損傷してしまうことを脊髄損傷といいます。脊髄損傷の中でも、脳に近い頚髄損傷は重篤な障害を引き起こすことになります。
後遺障害等級認定基準
脊髄損傷のひとつである頚髄損傷は、むち打ちと同じく神経系統の機能障害であり、1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級が認定され得ます。
・1級1号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」
・2級1号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」
・3級3号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」
・5級2号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に簡易な労務以外の労務に服することができないもの」
・7級4号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、簡易な労務以外の労務に服することができないもの」
・9級10号 「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」
・12級13号 「局部に頑固な神経症状を残すもの」
これらの分かれ道
脊髄損傷は、身体的所見及びMRI、CT画像等によって他覚的に裏付けられる麻痺の範囲と程度に則って後遺障害等級が幅広く定められています。
たとえば、片方の足が麻痺している場合には9級から5級が認められる可能性がありますし、四肢麻痺が認められれば3級以上である可能性が高いです。
等級が幅広く設定されているということは、何級が認定されるかで、賠償額は大幅に変わってきます。自身の後遺障害に見合った適切な認定を受けるために、資料収集が大切になってきます。
脊髄損傷について詳しくはコチラをご覧ください